ブラジルのミナスジェライス州のコーヒー産地へ行ってきました。
ブラジルは私にとってとても興味深い国でしたが、なかなか訪れる機会がありませんでした。ブラジルで生産されるコーヒーの一般的なイメージは、酸味が少なく、ナッツやチョコレートの様な風味なので、主にエスプレッソブレンドなどのベースのコーヒー豆として存在していると言えるでしょう。
コーヒーのブレンドはしない私たちが、今まで購入してきたブラジル産も主に酸味が少なく、クリーミー で柔らかい酸味、ミルクチョコレートの様なボディを持つもので、アフターテイストが綺麗なものを慎重に選んで購入してきました。
そして、それは主に抽出の特性上、エスプレッソで使われた時に最高の風味を表現できる焙煎プロファイルを用いています。
今まではこの様なイメージをブラジルに抱いていました。
しかし、今回の旅を通してその概念を少し変えることができました。
ミナスジェライス州のサン ゴンサーロ ド・サプカイー町にある共同体 APAS にて行われたトップ10を決めるコンペティションのジャッジをさせていただき、その中で驚きのコーヒーに出会いました。程よいボディと透明感のある甘さ、インテンスで延びのある果実味。
ブラジルとは思えない、というか今までのイメージを覆すプロファイルでした。
優勝したのは Sitio Sao Francisco という農園で、ほぼ全てのジャッジが一致での一位を獲得しました。 1300m〜1600mのブラジルとしてはとても高い標高になるエリアということも、きれいな酸味のある質の高いコーヒーを生み出す要因の一つかもしれません。
私はこの優勝したマイクロロットを購入するためにオファーを出しています。
ちなみにブラジルの農園の表記には Fazenda と Sitio が主に農園名の前に表記され、どちらも農園を意味する言葉ですが、Fazenda は大きい農園、Sitio は小規模の農園を指す言葉になります。
コンペティションが終わり、バルジニャにある Cafe bras(エクスポーター)のラボに行きました。 そこでさらにたくさんのコーヒーをカッピングしました。どのオリジンに行っても、必ずコーヒー専門のエクスポーターのラボでカッピングをします。
エクスポーターが用意するカッピングの役割は、バイヤー(私たちやその代行業者、例えば Nordic Approach)が買いそうなコーヒーを農園や共同体から集め、管理しテイスティング会を開き、購入に繋げることです。
今回は48種類をカッピング。
私のために用意してくれた2種類のパルプドナチュラルを除いて、全てナチュラルプロセスでした。
日本でよく飲まれている様な強いナチュラル臭がするものばかりではなく、香りがクリーンなものもありました。
しかし、Phenolic(フェノリック)と呼ばれるディフェクトもいくつかありました。フェノリックとは主に独特な匂いの表現で、アルコールの様な匂いです。これはナチュラルプロセスをする段階で過度に発酵したりする時に発生してしまいます。
ナチュラルプロセスとは、果実を収穫後、そのまま乾燥工程に入る精製方法です。乾燥させる期間は、天候にもよりますが17日間から30日間くらいです。
また、雨や湿度の多い地域では天日干しだけでは間に合わないので、乾燥機を使ったドライイングも行われています。
私が初めてドライイングマシンを見たのは、中米ホンジュラスの La Paz にあるキャバレロのウェットミル (精製所)でした。キャバレロのウェットミルは高い標高に位置するので、天候が変わりやすく、天日干しがうまくいきません。
その代わりにドライイングマシンを使用していました。
このマシンで乾燥させるコーヒーは主にコモディティコーヒー(質より量重視のグレード)として取引されますので、フグレンが購入することはまずあり得ません。
キャバレロのウェットミル付近の気候
ドライイングマシン
フグレンが購入するコーヒーのドライイング(キャバレロ)
話をブラジルに戻します。
もう一つ、今回の旅で驚きのコーヒーに出会いました。 弱冠26歳の生産者(カッパドーシア農園のアウグスト)が作った COE 出品のためのマイクロロットです。
彼は今までのブラジル産のコーヒーのイメージを覆す様なプロファイルのコーヒー作りに情熱を注いでお り、ブラインドカッピングでもその差は歴然としていました。
ここまでのコーヒーが作れるということに驚き、またコーヒーの奥深さを実感しました。
もうブラジルは「酸味が柔らかい」「ナッツやチョコレートの様」「エスプレッソのベース」などの固定観念から抜け出せるレベルにあります。ただ一方、そういった質の高いコーヒーにはまだまだ生産コストの見直しが必要の様ですが、近い将来フグレンでもそのレベルのコーヒーを購入できると思っています。
最後に、ノルウェーのコーヒーがなぜ美味しいのかを、ブラジルとの歴史を振り返りながら見てみましょう。
1808年、ナポレオンの大陸封鎖を拒否したポルトガルはフランス軍に攻め入られ、ポルトガルは一時的に首都機能をリオデジャネイロに移しました。
1821年にナポレオンがポルトガルを去った後、ポルトガルはリスボンに戻りましたが、ジョアン6世の息子ドン・ペドロはリオデジャネイロに残り、1822年にブラジルとして独立しました。
ポルトガルといえばバカラオ。バカラオに使う食材はタラの塩漬けです。ノルウェーは質の良いタラの塩漬けをポルトガル文化の残るブラジルに輸出していました。
帰りの船には、ブラジル産アラビカ種のコーヒーを積み込み帰還。こうしてノルウェーは質の劣るロブスタ種の流入が起こることなく、質の優れたアラビカ種を昔から飲んでいました。その歴史的背景が、今のノルウェー、オスロのコーヒー文化を生み出しました。
こういった歴史を積み重ねて、今みなさんが飲んでいるコーヒーがあり、さらにこの先の未来のコーヒーに繋がって行くことも忘れないでおきましょう。
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