Augusto Borges / Brazil

アウグスト・ボルジス / ブラジル

サンパウロの南部から幹線道路を約3～4時間走ると、アウグストが住むサン・ゴンサーロ・ド・サプカイーに到着します。この町は、ブラジルのコーヒー生産における主要な産地として名高いミナスジェライス州南部に位置する小さな町です。

すっかり日が暮れた頃に町に着くと、アウグストは笑顔で私たちを迎えてくれました。彼の背後のデジタルサイネージには、私たちの到着とともにFUGLENのロゴが映し出されていました。チャーミングでサービス精神旺盛な彼は、写真や動画で何度も見ていたせいか、初対面とは思えない親近感がありました。

アウグストは家族から引き継いだコーヒー農園を営む、若き4代目の生産者です。幼い頃から両親の仕事であるコーヒー栽培を手伝い、2008年、17～18歳の時に父親から農地を受け継ぎました。両親は彼に弁護士や医師になることを望みましたが、農園での生活を愛する彼は、コーヒー栽培の道を選びました。私たちが訪問した2024年、30代前半の彼は二人の子供の父親となっていました。

農地を受け継いだ後、コーヒーの取引価格や持続可能性について考えを深める中で、スペシャルティコーヒーの栽培への転換を決意しました。3代続いた栽培方法を変更することは大きな挑戦だったでしょう。それでも、彼はその覚悟を決めました。アウグストは、スペシャルティコーヒーには適正価格での取引システムだけでなく、人と人を繋ぐ力があると語ります。自分の名が記されたパッケージを誰かが手に取る時点で、その人との関係はすでに始まっているのだと言います。

現在、彼は品質向上に加え、農地全体の生育環境の改善にも取り組んでいます。自身が父から受け継いだように、将来、二人の子供に農園を託すため、生態系の保全が必要だと強い眼差しで語ってくれました。また、生産者や従事者が適正な収入を得て、良好な生活水準を維持できることが、次世代がコーヒー産業に携わりたいと思える要因になると考えています。

彼の農地には11の区画（以下、農園）があり、それぞれが異なる標高、シェードツリーの有無、日照条件下でコーヒーを育てています。その中で、私たちは比較的高地に位置するカッパドーシア農園のコーヒーを長年買い付けています。小高い丘の風通しの良い場所にあるこの農園では、シェードツリーの効果と涼風により、コーヒーチェリーがゆっくりと熟成していきます。その結果、低地では見られない鮮やかな果実味を持つコーヒーが生まれるのです。

開けた低地の農園では機械収穫を採用し、カッパドーシアやオタビオなどの傾斜地では、地形的な制約と品質維持のため手作業で収穫しています。当初、機械収穫に対して品質面での懸念がありましたが、広大な農地（ブラジルの基準では比較的小規模）を見学し、全面的な手作業収穫の困難さを実感しました。様々な区画で収穫期が異なり、常に理想的なタイミングでの収穫は難しく、労働力の効率的な配分も課題となっています。

買い付けのカッピングは、輸出業者JAGUARのラボと、後日アウグストの自宅ラボで実施しました。ブラインドテイスティングの結果、今年もカッパドーシア農園のコーヒーを全量買い付けることになりました。私たちの味覚が、この土地の特性を好んでいるのかもしれません。