Honduras 第2の都市、北西部に位置するSan Pedro Sulaから南へ車で約2時間、Santa Barbaraへ行ってきました。
焙煎を始めて、2年目にこの土地のコーヒーに出会い、その印象的で力強い個性の虜になりました。
今年も昨年に引き続き、生産者を訪れました。
El Guayabo
2012年、マリオ・モレーノはこの場所にコーヒーの苗を植え、4年後の2016年の収穫から私たちはこのEl Guayaboのコーヒーを買い始めました。
実はこの土地は、1998年のハリケーンの影響で、斜面の4分の1ヘクタール(2500m2)が地滑りを起こしました。
そのため、El Guayabo Farmは大小の岩石がそこら中に散らばっています。
この岩石が、ミネラルや、水はけを生み出し、独特な環境を作っているのかもしれません。
熟したコーヒーの果実をいくつか食べてみて感じたのは、繊維質がしっかりとしていて、水分も少なく、
果汁もただ甘いのではく、引き締まったような甘さで、ミューシレージもパーチメントを強く覆っているように思えました。
標高は1700メートル。寒暖の差の激しさが、硬くしっかりとした果実を作り出しているようです。
Cup of Excellence 2015年16位、2016年には4位、2017年には3位と、その結果にも納得させられます。
今回訪れた日は、夕方だったためか半袖ではいられないくらいの気温でした。
寒い気候に加え、今年は雨も多く、土が水を含みすぎているため、土は粘土のように固くタイトになり、根は十分に栄養分を吸えない状態になっていました。
もしコーヒーの樹が根から十分な栄養を得られなくなると、樹全体が弱くなり、リーフラストなどの病気にかかりやすくなります。そして収穫量も減ってしまいます。
今年のような、雨も多く気温も低い状態は、2012年以来初めてだと心配そうに話していました。
サンタバーバラの斜面が面する巨大な湖、ヨホア湖が、山の地形と作り出すマイクロクライメイト(常に変化しやすい気候)は、通常であれば素晴らしいコーヒーを生み出す環境になりますが、今年のように北半球全体が記録的な寒さになった時、味や生産量にいい影響を及ぼすことはありません。今シーズンもどれくらいのコーヒー豆が生産され、私たちの元に届くかはまだわかりませんが、引き続き見守っていきたいと思います。
Nelson Ramirez (農園名:Chely)
今年もまたネルソン・ラミレズに会いに行きました。
彼はマクドナルドなどとも取引のある大手の食品会社を退職し、2010年からこのSanta Barbaraの地でコーヒーの栽培をはじめました。
現在、パーマネントの従業員は14人、収穫シーズンは60人ほどのピッカーが働いているそうです。
ホンジュラスのサンタバーバラでは、5月、6月にまとまった雨が降り、10月前後からコーヒーの花が咲きます。
そして12月から5月くらいまでの期間がコーヒーチェリーの収穫となります。
しかし今年は気候変動により、2ヶ月遅いスタートとなりました。
コーヒーの収穫は、そのシーズンの気候の影響だけでなく、前年度の収穫量が、次のシーズンの収穫量に影響を及ぼします。
2017年は収穫量が多く、加えて今年の寒さにより、遅く長い期間の収穫が予想されます。収穫量も前年に比べ、減少が予想されています。
こういった、厳しい環境でのコーヒーの栽培は、コーヒーの樹に与える栄養分にも注意を払わなければなりません。
ここではウェットミルの近くで、コーヒーの栄養源を製作しています。
除去したコーヒーの果肉と鳥の糞、もみ殻などをミックスして作っています。
専門家の指示に従い、その場所の土壌の状態や、シーズンの収穫量を計算して、必要な量の堆肥を土壌に与えます。
年に2度、1度目は6月。2度目は花を付ける10月から11月。
この日もネルソン自らがスコップを持ち、肥料を混ぜ合わせていました。
次の日にネルソンとランチを一緒に取りました。
昨シーズンの私たちの購入量を彼に伝えると、本当に嬉しそうでした。
彼は改まって、「そうして私たちのコーヒーを購入してもらえるおかげで、働く人に給料が払え、また設備のメンテナンスや、新しい設備への投資ができます。本当にありがとう。」と伝えてくれました。彼は継続して美味しいコーヒーを作るために、未来への投資を積極的に行っています。
コーヒーが美味しいと思ってもらえる瞬間があることは、ある意味奇跡です。
私たちロースターは、品質の良い素材(生豆)がなければ、美味しいコーヒーは作れません。
生産者は天候という最も手強いパートナーと協力しながら、そして土壌と対話し、さらに収穫に携わる人間と協力して、私たちに、そのシーズンのベストの素材を届けてくれます。
1杯のコーヒーを飲みながら、そんな関係性も思い浮かべてもらえたら幸いです。
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