今年3月、彼らの農園を訪れました。標高の異なる複数の区画を巡りながら、二人が日々向き合っているコーヒー栽培の現場を目の当たりにしました。森の中に昔からあったかのような佇まいの農園を歩きながら、Moisesが語ってくれたのは「土地を元の姿に戻すこと」という哲学でした。多様な植物や動物が暮らす森は傷ついても自力で回復する。でもコーヒーだけが植えられた土地は、循環がないから自分の力では回復できない。だからこそ農園を囲む生態系を整え、自然な形に戻していく取り組みに力を入れているのだと話してくれました。
収穫時に使う二重バッグシステムも印象的でした。ピッカーたちは2つのバッグを持ち、一つは完熟したチェリー専用、もう一つは過熟や未熟なチェリー用。完熟したチェリーだけを選ぶ技術に対して、平均以上の賃金を支払っています。精製施設も塵ひとつないほど清潔に保たれており、1日の作業が終わると必ず全ての設備が清掃されます。奇をてらった発酵や特別な設備ではなく、基本に忠実な丁寧な作業こそが高品質なコーヒーを生み出している。その徹底ぶりに深く感銘を受けました。
El Pantanal農園のCatuai品種。このコーヒーは私たちが最も長い間取り扱わせていただいているコーヒーです。
Pantanalは「湿地」を意味し、かつては冬になると水が溜まってぬかるむため、コーヒー栽培には向かない土地と考えられていました。でも今では素晴らしいコーヒーが育っています。2017年以来の定番区画で、毎年最初の一杯を飲む時には懐かしい友人に再会したような温かさがあります。産地でカッピングした時、普段感じていたドライフルーツのニュアンスとは違って、フレッシュで少しハーバルな酸味が印象的でした。ジューシーな果汁や華やかな紅茶を思わせる、軽やかで柔らかな甘さ。冬の朝、心を穏やかにしてくれるような一杯です。
フィルターローストでは軽やかで飲み飽きない、日常に寄り添ってくれるようなコーヒーに仕上がっています。エスプレッソローストはこのコーヒーが持つ甘さにより焦点を当て、果実味と甘味が調和した結果、ドライフルーツのようなしっかり目の甘さが感じられます。
焙煎所に届いた麻袋を開けると、いつもコーヒーの粒が揃っていることに驚かされます。初めてEl Pantanalの袋を開けた時も、焙煎する前からこんなに綺麗な状態なのかと感動したことを鮮明に覚えています。収穫から精製、選別まで、全ての工程が高いレベルで管理されている証です。
同じMarcala地域で育ちながら、それぞれ違う区画にあって、品種も異なることから、3つの味わいは大きく個性を持っています。でもどこか共通するトーンがある。それはこの土地のテロワールと、二人の丁寧なコーヒー作りによるものなのでしょう。3つのコーヒーを飲み比べる楽しみは、クリスマスならではの贅沢な時間です。
彼らは私たちのヒーローです。そして彼らが作り出すコーヒーには、その努力と哲学がぎゅっと詰まっています。
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