オリジントリップ - ホンジュラス2019 後編 -

オリジントリップ - ホンジュラス2019 後編 -

5月 21, 2019

ホンジュラス北西部に位置する第2の都市サンペドロスーラ。
サンペドロスーラは残念ながら麻薬組織同士の事件が多発し、世界で最も治安が悪い都市と言われておりますが、そういったエリアには行ったことがないので、実際には体感することはありません。
麻薬などやめてみんなコーヒーを飲むべきだなと強く思います。

今回もラモン・ビジェダ・モラレス空港に降り立ったらすぐに、エージェントのベンジャミンと合流し、ペニャ・ブランカを目指して南へ向かいました。
ペニャ・ブランカは小さな街ですが、コーヒー産地の一つであるサンタバーバラエリアを訪れるコーヒーバイヤーの拠点になっています。
サンタバーバラ山は標高2777m。麓にはLago de Yojoa (ヨホア湖)が広がります。


ヨホア湖とその奥に見えるサンタバーバラ山

 

ズバリ、サンタバーバラのコーヒーがなぜ好きかというと、美味しいからです。
そしてどう美味しいのかというと、バランスの良い透明感のある果実味と、ほのかにチョコレートのようなやさしい甘さ、緑茶のような爽やかさ、そして全体としてインテンスだからです。
ここで生産される全てのコーヒーが、そこまで完璧だとは言い切れませんが、私はそういう美味しさに惚れて毎年この産地を訪れ、その年のベストなコーヒーを買っています。

産地の標高は1600mから1850m前後。
湖から発生する湿った涼しい空気が山へと登り、激しい寒暖の差を作り出します。標高の高い涼しい農園では、コーヒー豆はとてもゆっくり熟していき、力強い個性のあるコーヒーが作り出されます。

中米のコーヒー産地の主な収穫時期は早ければ11月から始まり、2月から3月にかけて終了しますが、サンタバーバラの1700m以上の場所では、4月から5月にかけてもまだまだ収穫しています。レイトハーベストと呼ばれ、私が思うにここではレイトハーベストの方が高品質です。

Mario Moreno ドライイングテーブルの乾燥工程とソーティング(欠点豆除去)

 

ソーティングした欠点豆

 

Farm: El Guayabo
Producer: Mario Moreno
Region: El Cederal

まずはGuayabo農園の生産者、Mario Morenoを訪ねました。
Morenoファミリーは大家族で、Marioを含む7人の兄弟はみんなコーヒーを栽培しています。 私たちたちは特にMarioが所有するEl Guayabo(グアヤボ農園)のコーヒーが大好きで、2016年からほぼ独占的に購入しています。
独占的にと言っても、生産量はとても少なく、毎年10バッグ(700kg)前後しか購入できません。
去年(2017-2018)はとても雨が多く、生産にとても苦労していました。
今年は逆にとても乾いた気候が続き、土壌はとても乾燥していました。

 

土が乾燥してしまうと、コーヒーの樹は、果実を早めに実らせようとします。
このため今年は収穫が早く始まりました。
加えて暑い日差しを浴びたコーヒーの実はダメージを受けてしまったようです。
強い日差しが品質に影響することは、シェードツリーの下のコーヒーの実が健康的なのを見るとより実感します。

Guamaと呼ばれるシェードツリー

 

それでも1750m付近の高い標高にあるコーヒーの実は、いつも通りの良い育ち方をしているので、今年のカップクオリティも素晴らしいものなると予想されます。
いつも、農園の栽培環境の過酷な部分ばかりフォーカスしてしまいがちですが、全体としては、出荷量は前後するにせよ、味わいは高い期待が持てます。

ブラインドカッピングでも、今年のEl Guayaboの個性は際立っており、私はスコア87.5、他のカッパーの平均だと88ポイントと、ずば抜けていました。

 

 

 

続いてネルソン・ラミレズです。

Farm: Chely
Producer: Nelson Ramirez 
Region: El Cielito

 

 

Nelsonは農業にできる限り科学的な取り組みを行うプロデューサーです。
健康的な土壌づくり、周辺環境を壊さない排水処理方法、クオリティを落とさない収穫量増加の取り組みについて意欲的です。
常に未来を見据えた、サスティナブルなコーヒー農園を目指し、様々な実験や新しい試みに資金と時間を投資しています。

気候変動により栽培する環境は毎年変化しています。多雨、乾燥、強い日差し、それらを研究し、対策を講じていかなければ、将来的にコーヒーが作れない環境が出てくることは避けられないようです。
それがなん年後になるかわかりませんが、Nelsonのようなデータに基づく研究を行い、問題を解決していくプロデューサーはなくてはならない存在になるでしょう。

彼の最新のプロジェクトはミミズを使った排水の分解と、オーガニック肥料です。果肉除去後、ミューシレージを分解した水は糖分をたくさん含んでおり、そのままでは排水することはできません。通常は斜面に幾つかのため池を作り、上から徐々にろ過して排水するので、時間がかかります。

 

発酵工程と洗浄後に出たミューシレージを含む排水

 

ネルソンは発酵工程時にミューシレージを分解してできた排水を、ミミズを繁殖させたスペースに撒き、分解させ、さらに除去した果肉と混ぜて完全に再生可能なオーガニック肥料を作る計画が進行中です。
実験過程でミミズが全滅するなどの失敗もありましたが、来年の初めには完成予定とのことです。


とはいえ私の考えでは、いくら環境に配慮していても、出来上がったものが美味しくなければ、継続して購入することは難しくなってきます。

だから私はネルソンを買うのです。

彼は決して買ってくれとは懇願してこない代わりに、彼のコーヒーに対しての取り組みや考え方を詳しく説明し、共有してくれます。
そして3年前に初めて購入した時から、毎年品質が明らかに向上していて、取り組みと結果が一致している素晴らしい生産者です。
今年もサンタバーバラからは選び抜いたロットを購入しました。

 

今年の秋までにはお届けできると思います。お楽しみに。

 

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